軟部外科シリーズ:チェリーアイ整復

今回は、目周りの悩み『瞬膜突出(チェリーアイ)』について、ご紹介します。

患者様情報

動物種:犬

年齢:2才

体重:3.3kg

主訴:右目が充血している、目頭の部分が膨らんでいる

チェリーアイとは

人では退化して消失していますが、眼球と下眼瞼の間に瞬膜(第三眼瞼)という構造があります。

瞬膜には瞬膜腺と呼ばれる涙を出す分泌腺があります。

通常、瞬膜腺は結合組織で周りの組織とつながっていますが、何らかの原因でそのつながりが緩くなると反転し、露出してしまうことがあります。

この状態を瞬膜腺脱出(チェリーアイ)と呼び、1歳未満の子で発症することが多いです。

犬での発症がほとんどですが、個人的に猫での発症も経験があります。

以下の画像は目の構造の断面図です。

Screenshot

チェリーアイが続いてしまうと瞬膜線および瞬膜が炎症・感染を起こし、充血、流涙、目脂が生じ、二次的に角膜炎や角膜潰瘍などが発症することもあります。

治療法は抗炎症薬や抗菌薬の点眼液で行いますが、再発する場合や改善がない場合は手術の適応になります。

今回の症例の子は点眼液治療による反応が乏しく、飼い主様との相談の上、手術を行う運びとなりました。

手術

手術方法は主『瞬膜線を周りの固い組織に固定する方法』、『瞬膜に埋め込む方法』があります。

今回は瞬膜に埋め込む方法を行いました。

瞬膜線は瞬膜の結膜(眼球、眼瞼を覆う粘膜)に覆われています。

瞬膜線の縁の両端結膜に切開を加え、互いの結膜同士を縫い合わせて瞬膜線を埋め込みました。

切開を加える理由として粘膜は損傷が起こった場合、周りの組織と癒着を起こします。

さらに粘膜は修復が早いため、目的組織を固定したい場合にはわざと損傷させ、修復を促します。

手術の注意事項

粘膜同士を縫い合わせる際に結び目が眼球側に出ないように注意します。

結び目が眼球側に来てしまうと縫合糸が眼球を傷つけてしまうだけではなく、結膜炎を誘発し、瞬膜線脱出の再発につながる恐れがあります。ですので、結び目が埋没するように縫合します。

術後の注意事項

術後は手術の影響により一時的に炎症が起こりますので、抗炎症薬や抗菌薬の点眼液をしっかり点眼していきます。気にして掻いてしまう場合は、エリザベスカラーの装着をお願いすることもあります。

入院は必要なく、当日の退院が可能になります。

術後の経過

手術直後は炎症によりまだ瞬膜線が脱出しているように見えますが、

次第に治まっていき、1週間ほどでほぼ正常に戻ります。

本症例の子は順調でその日のうちにほぼ収まっていました。再発も認められませんでした。

◎術前の写真です。

◎術後の写真です。

今年のブログは今回で最後になります。お読みいただいた皆様本当にありがとうございました。

来年も順次手術の症例を載せていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

それでは、皆様良いお年をお迎えください。

獣医師 上野