胆嚢粘液嚢腫について

こんにちは、獣医師の松本です。

今回は、胆嚢粘液嚢腫が認められたわんちゃんのお話をさせていただきます。

胆嚢とは

胆嚢は、肝臓と十二指腸の間にある袋状の臓器で、肝臓で分泌される胆汁を一時的に貯蔵し、濃縮します。

食べ物が胃から十二指腸に移動すると、胆嚢は収縮し、貯蔵されていた胆汁が総胆管を通って

十二指腸内に放出されます。

放出された胆汁は、脂肪の消化・吸収を助ける働きと、コレステロールやビリルビンといった物質を

排出する働きを持っています。

胆嚢粘液嚢腫とは

通常、胆嚢内にはさらさらとした液体である胆汁が貯留されていますが、

胆嚢粘液嚢腫では、粘性高い成分(ムチン)が過剰に分泌され、胆嚢内に蓄積します。

粘性が高いムチンが蓄積することで、胆嚢は硬くなり、収縮力の低下、胆汁の流れが悪化を引き起こします。

◯患者さま情報

犬 MIX

避妊メス

12歳齢

頻回の嘔吐と元気食欲の消失を主訴に来院されました

検査

血液検査 

炎症が高くなっていたとともに、肝臓の数値が大幅に上昇していました。

また、総ビリルビン値においても上昇が見られ、黄疸が認められました。

レントゲン検査 

腹水や胆石が疑われる所見は認められませんでした。

超音波検査 

胆嚢の内部には、中心部に高エコー物質(白く見える部分)が確認され、

その周囲を低エコー物質(黒く見える部分)が覆って充満している様子が認められました。

胆嚢自体はやや大きくなっており、胆嚢から十二指腸に接続する総胆管も拡張している様子が見られました。

◯治療

4日間にわたって、皮下点滴とお薬(制吐剤、抗炎症剤、抗生剤)により、内科療法にて治療を開始しました。

3日目には、嘔吐の症状は治まり、元気食欲も出てきたとのことでした。

その後は内服薬に変更して、治療を継続したところ、血液検査での炎症の数値は、正常値まで下がり、

肝臓の数値、総ビリルビン値にも良化が見られています。

超音波検査においても、総胆管の拡張所見は消失していました。

現在は、内服薬(ウルソ錠、スパカール錠)を服用しながら、良好な経過が得られています。

胆嚢粘液嚢腫は、症状が重篤化すると、外科介入が必要になることも少なくありませんが、

今回の患者様は、内科治療により症状の改善が認められ、現在も元気に過ごしております。

胆嚢の病気の初期段階では、体調に大きな変化はなく、無症状であることも少なくありません。

しかし、病状が進行し、胆汁排出に問題が生じると、

嘔吐や下痢、食欲不振、腹痛といった症状が認められるようになります。

ご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。