2025年11月より、CT検査設備を導入いたしました。
今回はCT検査のお話と、実際に検査をした症例を紹介させていただきます。
CT検査とは、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)検査の略であり、
X線を利用して体内を断面図として撮影する検査です。
特殊なリング状の機械を用いて、360度方向からX線を連続して当てることにより、
短時間で体内の詳細な評価が可能となります。
CT検査は、骨格や内臓の異常、腫瘍の評価などを得意としています。
撮影した画像は3D画像として再構築し、立体的に内臓や腫瘍を評価をすることもできます。
そのため、手術計画を立てるための術前検査としても、非常に有用な検査となります。
よくご質問をいただくのですが、MRIとは別の検査です。
CT検査がX線を利用するのに対し、MRIは磁気を利用して体内を撮影します。
またCT検査は数分~15分で撮影が終わりますが、MRIでは20~60分かかります。
得意とする検査部位にも違いがあり、主に脳や脊髄といった神経の病気の検査として利用されています。
CT検査において必要となる条件に、全身麻酔があります。
検査中に動物が動いてしまうと、撮影した画像がブレてしまい、画質が落ちてしまいます。
その結果、病気の評価に悪影響が出る可能性があるので、例外はありますが全身麻酔が必要になります。
CT検査時に、造影剤を投与して撮影する検査方法があります。
造影剤を投与することで、臓器の画像に濃淡がついて評価しやすくなったり、
腫瘍や血管の異常が評価しやすくなったりします。
造影剤を投与する場合は造影CT検査、投与しない場合は単純CT検査と、区別して呼ぶこともあります。
症例紹介
最後に、実際にCT検査を実施した症例をご紹介します。
患者様の情報:猫、ラグドール、10歳、男の子
くしゃみを主訴に来院されました。
以前からくしゃみや鼻汁を繰り返しており、抗生剤などで治療をすると良くなるのですが、
しばらくすると再燃していました。
血液検査やレントゲン検査などを実施しましたが、問題となる異常は認められませんでした。
しかし、くしゃみの発生場所となる鼻腔(鼻の中)は、一般的な検査では評価しにくい部分であり、
腫瘍などの可能性を否定することが困難です。
そこで鼻腔の評価に有用な、CT検査を実施させていただきました。
CT検査結果
単純CT検査では、鼻腔内に貯留物が認められました。

造影CT検査では、鼻粘膜の造影増強は認められましたが、貯留物は造影増強が認められず、
炎症による鼻汁の貯留が疑われました。また、異物や腫瘍を疑う所見は認められず、
鼻腔の周りの副鼻腔という空間にも、炎症などの異常は認められませんでした。

以上の所見から、慢性鼻炎と診断しました。
他の検査結果も踏まえ炎症の原因は免疫介在性疾患を疑っており、
現在は内服薬や吸入療法で、抗炎症治療を試みています。
なお、偶然見つかった所見ではありますが、左耳の奥の鼓室胞という空間に、貯留物が認められました。
これは中耳炎が疑われる所見ですが、鼻炎に伴い液体貯留が見られたり、
全くの無症状で液体貯留が見られたりすることがあります。
本症例でも中耳炎に関連する症状が認められませんでしたので、慢性鼻炎の治療をしながら経過観察としました。

現在、様々な検査が実施可能ですが、検査によって、評価が得意な病気や部位は異なります。
CT検査は得られる情報が多いということもありますので、
CT検査が有用な場合は、随時ご案内させていただく予定です。
獣医師 矢野
