2026/10/11

CT

CT検査シリーズ:脳腫瘍の可能性

CT検査設備を導入してから、こちらからのご提案だけではなく、検査をご検討されてお問い合わせを受けることも徐々に増えてきました。

飼主様の健康や病気への意識の高さを感じています。

今回は、そのCT検査で脳腫瘍が疑われた症例をご紹介させていただきます。

患者様の情報:犬、ボーダーコリー、12歳、女の子

全身性のけいれん発作を主訴に来院されました。

来院時には発作は落ち着いていましたが、全身がけいれんして意識もない状態だったとのことでした。

また、発作の数時間前から、同じ場所をクルクルと回る旋回運動も見られていたそうです。

身体検査で異常は認められませんでしたが、血液検査ではクレアチンホスホキナーゼの高値を認めました。

クレアチンホスホキナーゼは、主に脳・心臓・筋肉の疾患で高値になります。

今回は心臓や筋肉の疾患の兆候を認めませんでしたので、脳疾患を第一に疑いました。

けいれん発作について

けいれん発作は、身体の一部や全身の筋肉が収縮したまま硬直したり、ガクガクと激しくけいれんしたりする状態です。

意識の消失や失禁などを伴うことも多く、発作に先立って旋回運動などの異常行動を取ることもあります。

原因は脳疾患と脳以外の疾患に大別して判断していきます。

脳疾患だけではないことに注意が必要です。

 ●脳疾患:脳炎、脳腫瘍、外傷、特発性てんかんなど

 ●脳疾患以外:腎疾患、肝疾患、中毒、低血糖など

脳疾患はCT検査やMRI検査を中心に診断していきますが、脳疾患以外であれば、血液検査などを中心に診断していきます。

治療は発作を抑える効果のある薬(抗てんかん薬)などを投与しつつ、原因に合わせた治療を追加していきます。

上記の症状や検査結果から、脳疾患の可能性が高いと判断しました。

そのため、発作の再燃を防ぐためにレベチラセタムなどの抗てんかん薬を投与しました。

また、原因の探索のための頭部CT検査をご了承いただき、実施しました。

CT検査の結果:腫瘍を疑う病変が脳と鼻腔内に認められました。

画像所見からは、鼻腔内腫瘍が骨を溶かして脳へ侵入したことによる、続発性脳腫瘍が発作の原因と考えられました。

  • 鼻腔内を占拠している、腫瘍を疑う病変

  • 鼻腔内を占拠して脳へ侵入している、腫瘍を疑う病変

  • 鼻腔内を占拠して脳へ侵入している、腫瘍を疑う病変

脳腫瘍について

脳腫瘍は発生元になった臓器により分類されます。

 ●原発性:腫瘍が脳から発生した場合

      髄膜腫、下垂腫瘍など

 ●続発性:腫瘍が脳以外の臓器から発生し、脳に転移した場合

      リンパ腫、肺癌、血管肉腫など

※脳に近い臓器から食い込んで侵入する場合と、脳とは離れた臓器から血管などを通り転移する場合とがあります。

今回のような状況では、鼻腔内病変の生検・病理組織検査をして確定診断をつけ、手術・抗がん剤治療・放射線治療を検討するのが一般的な流れです。

ただ今回は、動物が高齢ということもあり、飼主様が症状を和らげていく治療を望まれました。

そのため、抗てんかん薬のゾニサミドやレベチラセタム、脳浮腫軽減のステロイド、脳圧を下げるイソソルビドなどを処方し、経過を見ていくことになりました。

旋回運動や発作の再燃などが予測されますので、出てきた問題に順次対応していく予定です。

今回の症例では、けいれん発作の原因診断にCT検査が有用でした。

脳疾患の確認にはMRI検査が最も情報量が多いのですが、全身麻酔が必要かつ麻酔時間が長いなどのデメリットがあります。

CT検査も全身麻酔が必要ですが短時間であり、今回のように一部の腫瘍は充分に確認可能です。

また脳出血や外傷など、CT検査の方がより有用な疾患もあります。

CT検査とMRI検査の両方を組み合わせるのがベストですが、全身麻酔のリスクなどから、困難なケースも少なくありません。

今後も、動物の状況に応じて、優先すべき検査を慎重に判断し、ご提案させていただきます。

獣医師 矢野

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