2026/07/01

軟部外科

軟部外科シリーズ:皮膚切開の器具

こんにちは、獣医師の上野です。今回は皮膚切開を行なう際に普段使用している器具を一部ご紹介したいと思います。

皮膚切開はほとんどの手術で行われる始まりの手順です。

腹部の正中切開を例にご紹介します。

切開:メス

まずはメスを使用し、皮膚の切開を行います。

メスの刃には様々な形があり、No.10~No.25(No.370、No.390)と番号がふられています。

当院ではNo.11とNo.15を使用しています。

No.11は刺入するような切開のケース(胃切開、膀胱切開など)で使用し、No.15は直線や曲線での切開で使用しますので、No.15を皮膚切開で使用しています。

メスホルダー(柄)にメス刃を装着・交換できるタイプのものを使用しています。

剥離:メッツェンバーム剪刀

皮膚を切開した後は脂肪組織が見えてきます。

腹壁(腹筋)まで露出するためにはこの脂肪組織も切開しなくてはいけません。

皮膚と同じようにメスを使い切開することもありますが、メスの刃は非常に鋭利であり、腹壁まで刃が届いて傷をつけてしまうこともあるため、メッツェンバーム剪刀を使用します。

メッツェンバーム剪刀には先端が真っ直ぐのもの、曲がっているものがあり、曲がっているものを好んで使用しています。

剪刀の先端を脂肪組織に押し当てて刃を広げるようにして分離・切開し、腹壁まで掘り進めます。

腹壁の正中には白線と呼ばれる腹筋同士のつなぎ目(筋膜)があるのでそれに沿うように切開を行います。

視野を確保するため、腹壁と脂肪組織の剥離も行います。

止血:電気メス

皮膚と脂肪組織には血管が走行しています。

切開・剥離を行う上で、出血は避けられません。

走行している血管は細く、微小な出血であることがほとんどであり、通常であれば自然に止血されます。

しかし、微小な出血でも患者の状態よってはバイタルの悪化につながることや、術野の視認性を悪化させてしまったり、手術が進行した際の重要な出血の見逃しなどにつながることもあります。

そのため出血が生じた際には都度しっかり止血を行います。

止血には電気メスを使用します。

電気メスは電気によって発生する熱で組織を焼き切ったり、組織を凝固させたりすることができます。

先端が交換可能であり、形が大きく分けて2種類存在します。

モノポーラ

先端がひとつになっており、身体の下に対極板をおいて使用します。

バイポーラ

先端がふたつあり、鑷子のような形になっています。

当院ではバイポーラを使用し、止血したい部位を挟んで凝固しています。

柔らかい組織であれば凝固しながらの剪断も可能です。

その他:鑷子

剥離や止血の際に組織の牽引や視野を確保といった細かい操作には鑷子が欠かせません。

私は右利きなので、左手に鑷子、右手にメインとなる剪刀や電気メスを持ち作業を行なっています。

当院では先端の細いアドソン鑷子を主に使用しています。

ここまで皮膚切開で使う器具をご紹介させていただきましたが、必ずこの器具を使う!というわけではありません。

皮膚や脂肪の厚みや硬さ、血管走行など患者さまによって違い、毎回全く同じ状況ということはありません。

状況に応じて患者さまにとって、自分にとってベストな器具を選択しますので、それこそ器具の選択は多種多様なのです。

お時間をいただきありがとうございました。

また機会があれば使用している器具をご紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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