消化器疾患シリーズ9:猫の消化器型リンパ腫(高分化型)

猫の下痢を引き起こす疾患の1つに、『消化器型リンパ腫』という病気があります。

今回は、『猫の消化器型リンパ腫(高分化型)』について、ご報告いたします。

猫の下痢を引き起こす疾患について、当院で見られやすいものを記載いたします。

① 食事による影響

食事内容の変更、食物アレルギー、給餌量の多さ

② 消化管による問題

感染症(寄生虫、細菌性、ウイルス性)、自己免疫性腸炎(IBD)、腫瘍(リンパ腫)、異物

③ その他の臓器による問題

肝臓、膵臓、甲状腺機能亢進症

上記の内容が、比較的多く見られる『下痢を引き起こす疾患』になります。

消化器型リンパ腫について

消化器型リンパ腫は、胃、小腸、大腸などの消化管に発生する悪性腫瘍です。

猫では、5歳以上(中齢)から発症する可能性があり、下痢、吐き気、食欲不振、元気消失、体重減少などの

症状が1つ以上現れます。

リンパ腫には、悪性度の高いタイプから緩徐に進行するタイプまで様々なタイプが存在します。

タイプ分けについては、リンパ球の大きさや形態で行い、『分化度』という言葉で判別しています。

簡潔に記載すると、以下の通りになります。

低分化:大きなリンパ球で、細胞分裂が早く、進行しやすい(悪性度が高い)

高分化:小さなリンパ球で、細胞分裂が遅く、進行は緩やか(悪性度が低い)

つまり、『高分化型リンパ腫は、悪性度が低く、ゆっくり進行するリンパ腫』です。

注意すべき点としては、ゆっくり進行するため、検査での特徴的な所見が少ないため、

断定することや早期発見をすることが難しいことが課題となります。

高分化型リンパ腫の確定診断について

日々の診療中に必要な検査については、血液検査、超音波検査ですが、

確定診断については、内視鏡検査での病理組織検査が必須になります。

高分化型リンパ腫については、十二指腸に浸潤することが多いため、胃カメラでの検査を実施します。

進行が緩やかなため、発症を疑う初期に内視鏡検査を実施すると、発見できない場合もあります。

検査を実施するタイミングが大切になるため、慎重に判断しております。

内視鏡検査所見

十二指腸の粘膜が、比較的、白く見えることが特徴になります。

初期病変の場合は、肉眼での大きな異常はなく、特徴的所見が少ないことが多いです。

まとめ

再発性や難治性の猫ちゃんの下痢の場合、『消化器型リンパ腫』が潜在している可能性があります。

治療を実施後、3ヶ月~6ヶ月経過しても、なかなか改善しない場合には、

内視鏡検査を実施することをご検討ください。

当院で実施している内視鏡検査は、全身麻酔が必要になりますが、

胃・十二指腸(いわゆる胃カメラ)のみの実施であれば、20分~30分以内に終わる検査になります。

お困りの場合には、お気軽にご相談ください。

アリイ動物病院 

院長 渡部寛之