消化器疾患シリーズ11:犬のジアルジア症

子犬で遭遇することが多い感染症についてのお話になります。

犬のジアルジア感染症について

1、疫学調査

子犬の下痢の原因の30%がジアルジア感染症と言われています。

犬同士で感染しやすく、子犬同士の場合には糞便の接触により60%近くの確率で感染が成立します。

人にも感染する可能性がある人獣共通感染症になります。

2、病態

ジアルジアの形態は、栄養型嚢子型(シスト)からなります。

栄養型は独特な目が2つあるようなカブトガニのような外観をしています。

糞便とともに排出される嚢子型が感染源となります。

ジアルジア(嚢子型)

感染動物の糞便を介して、消化管に侵入したジアルジアは、主に小腸に寄生することが多いです。

そして、小腸上皮細胞に寄生し小腸上皮細胞を破壊することで、ミネラルの分泌を促進し、

栄養素の吸収を阻害することで下痢を引き起こします。

動物達での体内では、特殊な抗微生物酵素であるデフェンシンや活性酸素種、一酸化窒素を産生し、

ジアルジアに対抗していきます。

長期間のジアルジアとの戦いが続くと、腸管上皮細胞が萎縮していき、小腸の機能低下を引き起こし

病状が悪化していきます。

3、症状

慢性的な下痢の症状が最も多いです。

その他、飲水量の増加、体の痒み、体重減少(体重が増えない)などが認められます。

4、検査

糞便検査にて実施しますが、糞便を顕微鏡で直接観察する方法での発見率が低いため、

当院では、検出感度が高いリアルタイムPCR検査法(IDEXX、外部委託)を採用しております。

5、治療方法

お薬での駆除が最も有効になります。

フラジール錠、ビブラマイシン錠での治療を推奨しております。

ジアルジアの感染状況に応じて、駆除にかかる期間が変わるため、

2週間〜3ヶ月以上投薬が必要になる場合もあります。

まとめ

慢性的に下痢をしている

一緒に生活を始めたばかりの子犬が下痢をしている

などの子は要注意になります。

さらに、ジアルジアは一度感染してても再感染することが知られています。

感染源となる嚢子(シスト)は外界で長期間生存が可能です。

嚢子(シスト)は乾燥と熱には弱いので、可能であればケージやサークルは

熱湯やスチームでの消毒を心がけてください。

再感染の可能性はありますが、必ず、治る感染症の1つですので、

お困りの際はお気軽にご相談ください。

アリイ動物病院 院長