消化器疾患シリーズ13:犬の急性膵炎

急な吐き気や下痢を引き起こす、急性膵炎についてのお話になります。

『昨日まで元気だったのに、夜中から急に下痢や嘔吐に悩まされる』、

1度はそのような経験をされたご家族様が多いかと思います。

そのほとんどは、『疲れ』や『お腹の冷え』や『気圧の変化』などに起因する体調不良のことがほとんどです。

ですが、同じような症状にも関わらず、急性膵炎が原因になっていることがありますので、ご注意ください。

急性膵炎を疑う症状:嘔吐の回数、性質に注意が必要です

1、嘔吐の回数:1日5回以上

2、嘔吐の性質:未消化物、白い泡状、ネバネバした透明な胃液

3、嘔吐のタイミング:食後すぐ、空腹でも吐きやすい

上記のような嘔吐の場合には、血液検査(急性膵炎を発見しやすい検査)を実施するように心がけています。

急性膵炎で特に注意が必要な症状:落ち着かず、吐きたくても吐けない状況

大型犬のご家族様は耳にしたことがあると思いますが、『胃拡張』を引き起こしている可能性があります。

胃拡張は胃の中のガスが異常に溜まってしまう状況を指し、命の危険があります。

発生頻度は低いですが、胃拡張を伴う急性膵炎を『劇症型膵炎もしくはその予備軍』と呼びます。

非常に注意が必要な状況で、72時間以内に改善が認められない場合、命の危険があります。

急性膵炎が怖い病気と伝えられる1番の原因です。

劇症型膵炎になぜ発展するかは、原因が解明されていませんので、正確な予測ができないことが現状です。

急性膵炎の原因:直前に食べたご飯がもっとも関係しています

1、感染症:寄生虫(湘南エリアで生活している場合は、基本的に大丈夫です)

2、薬剤性:免疫抑制剤、抗けいれん薬、抗がん剤など

3、高脂血症:血液中の中性脂肪値が高い状態

4、基礎疾患:糖尿病、クッシング、甲状腺機能低下症など

5、食事:油分の多く、普段食べていないもの(肉類が多いです)

若い子の急性膵炎の場合、そのほとんどが体調を崩す直前(48時間以内)に食べたものが影響しています。

急性膵炎の治療

従来までは対処治療を行なってきましたが、近年では膵炎の特効薬がありますので、ご安心ください。

注射薬:フザプラジブナトリウム(商品名:ブレンダZ)

注射薬になりますが、しっかりと効果のある薬剤ですので、おすすめです。

急性膵炎に関わらず、消化器内科を専攻としていますので、

消化器症状でお困りの際はお気軽にご相談ください。

アリイ動物病院 院長