軟部外科シリーズ:フェレットの断尾

こんにちは、獣医師の上野です。

今回はフェレットの断尾を行いましたのでご紹介したいと思います。

患者様情報

動物種:フェレット

年齢:4歳

体重:1.1kg

主訴:尻尾にしこりができている。

検査

身体検査

・尾の皮膚の下に固い腫瘤が触知

・皮膚の発赤

レントゲン検査

・尾椎を中心に骨増生もしくは石灰化を伴う球状の腫瘤状構造あり

疑われる疾患

・感染や外傷による炎症性変化

・皮下組織もしくは骨組織由来の腫瘍性疾患

抗生物質と抗炎症薬にて内服治療を1週間行いましたが、改善は認められませんでした。

腫瘍性疾患を疑い、飼い主様と相談の上、断尾をし病理組織検査で確定診断を行うことの了承をいただきました。

手術

悪性腫瘍であることを想定し、切除マージンを確保するため最低でも腫瘍から1椎体分離して切除します。

今回は2椎体分の切除マージンを確保しました。

なるべく骨を損傷しないよう尾椎関節で切除するように心がけています。

今回の注意点

尾の付け根に近い位置での発生でしたので、マージンを確保すると自然と肛門に近い位置での切除になります。

肛門周囲の筋肉、神経や血管、直腸壁を損傷しないよう心がけました。

また、傷口に便が付着しやすい状態になりますので、感染には十分に注意します。

術後の画像です。肛門の直上に縫合部が位置しています。

病理組織検査の結果:脊索種、完全切除

脊索とは脊椎動物が発生過程において保持する構造で、本来は成長と共に脊椎に置き換わっていく器官です。

フェレットの脊索種の多くは尻尾に発生します。

局所浸潤性が強く、転移は稀で、悪性度の低い腫瘍です。

完全切除によって良好な予後が期待できます。

術後の注意事項

感染をしっかり防ぐために最低でも1~2週間は抗生剤を投与します。

筋肉の切断、関節の離断を行なっていますので、疼痛管理もしっかりと行います。

術後の経過

経過は良好で術後2週間で抜糸を行えました。現在は再発がないか経過観察中です。

こういった尾の腫瘍以外にも皮膚の腫瘍などのご相談も見受けられます。

心配な事や気になることがありましたらお気軽にご相談ください。